「断捨離ブーム」が後押しした「ときめく」お片づけ
近藤麻理恵さんといえば「こんまり」の愛称で一世を風靡した、片づけコンサルティングのお方です。
断捨離ブーム直後捨てるモノの餞別に悩む人が多かったところへ、そのモノに対して「ときめくかどうか」という斬新な判断基準を打ち出したことで話題になりました。
彼女の片づけ技術は『こんまりメソッド』と称され、あらゆるテレビ番組で特集が組まれました。かわいらしい見た目とはうらはらに、片付けを指南するときの手厳しさが小気味よかったのもあるでしょう。
もちろん著書もベストセラーになりました。とはいえ私自身は正直、著書を手にするほど関心はありませんでした。
海外でも旋風を巻き起こした「こんまりメソッド」
彼女の手腕は海外でも高く評価され、ネットフリックスでリアリティ番組が製作されました。
海外ドラマや映画の中でも「『こんまり』って日本人が…」なんて、登場人物が語りだすシーンを見たのも一度や二度じゃありません。さすがにそれを目にするたびに、ひそかに興味は再燃していました。ただどこかで「今更こんまり…」という感じも。
しかし図書館で過去のベストセラーパトロール中、やっぱり一度読んでみるか~と軽い気持ちでこの本を手にしたところ…これが思いがけず(失礼!)「内容は普遍的だし、すごくわかりやすい」と感じ入ったので、今更ご紹介させていただく次第です。
ちなみに読んだのは発売当初のものですが、現在はその改訂版が出版されています。
「ときめき」の核心は「何を捨てるか」ではなく「何を残すか」
「片づけ」はやがて「捨てる」作業にたどりつく
こんまり氏は幼少期から、婦人雑誌の「収納術」などが大好きな「片づけマニア」だったそうです。
そうして家中を片づけまくっていくうちに、「モノを捨てる」ことに目覚めていきました。
そう、片づけの最終形態(最短手段)は「モノを無くす」こと。やがて彼女は自分のモノだけでは飽き足らず、家族のモノまで捨てようとしてもめたのだそうです。
実は私も子どもの頃から片づけ魔で、家族のモノを捨てたことが多々ありました。おかげで実家を出てからも、両親はモノがなくなると「ゆかが捨てたはず」とすべて私のせいに。ほぼ冤罪です(100%ではありませんが)。
昨今年老いた親の家を片付けようとしてトラブルになる話題もよく耳にします。家族といえど「捨てる」作業には、各々の価値観が色濃く反映するのでしょうね。
選ぶべきは「捨てるモノ」ではなく「残すモノ」
収納のワザに走ると、モノをためこむ原因の悪手になる場合があります。
かといってむやみになんでも捨てれば解決するわけではありません。
試行錯誤の末こんまりさんは気が付きます。
大事なのは「捨てるモノ」を探すことではなく「残すモノ」を選ぶこと。
そしてその餞別方法が、触った時に「ときめくかどうか」というものでした。
実際に一つずつモノに触れてみて、それが自分にとって「ときめく」ものか心の声と向きあうのです。初めてこの表現を聞いた時には、正直キャッチ―なフレイズの一人歩きにも見えました。
しかし今回あらためて著書を通して、「捨てる」ことを突き詰めた末の気づきだったことを知り納得したのです。
「捨てる」を終わらせてから「収納」を考える
モノが減っていない段階で収納グッズを買ったり、収納場所に悩んだりするのは本末転倒です。
まずは完璧にモノを減らすことが先決。
また片づけられない人が失敗するのは、一気にやろうとするからだと思われていました。しかし彼女はその逆を言います。
片づけは一気に、短期に、完璧に終わらせるべき。
毎日コツコツ片づけると一生終わりません。「片づけ祭り」として短期間で終わらせることで、部屋の劇的な変化が脳に強いインパクトを与え、リバウンドを防ぐのだそうです。
この本で紹介されていた「祭り」の内容を、具体的にまとめてみました。
何はさておき衣類から
彼女が推進するのは、始めに家じゅうの衣類を出してみるということです。
家族がいる人はもちろん、一人暮らしでも、なかなかの大仕事になるのは想像にかたくないでしょう。しかしこれにより、どこにあったかわからなくなっていたもの、本来あるべきでない場所にあったものが洗い出されます。
次にすべての衣類に対して「触ったときに、ときめくか」一着ずつ確認していきます。
この際彼女がおすすめするのは「オフシーズンのものから」選別するということ。寒い時期に冬物を手にすると、「なくなったら困るかもしれない」と判断がぶれてしまうからだそうです。
始めは「ときめき」の感覚がわかりづらくても、一つずつ触れていくうちに自分の感性が目覚めていきます。そうすると判別のスピードがあがっていき、その後今シーズンの衣類も上手に判断できるようになるというのです。納得。
そして本類へ
衣類が片付いたら、お次は本類です。
これも結構貯まりがちなもの。しかも家じゅうさらってみれば、いたるところにあらゆる冊子があるはずです。これをひとところに集めます。
一見すると本棚に立った状態で選別するとよさそうですが、彼女が推奨するのはとにかくすべて収納から出してしまうということ。
収納に収まって長らく動かされていない状態のモノは「寝ている」状態だというのです。
本に限らず、モノを残すか捨てるか選ぶときは、収納からいったん出して起こしてあげること。
そうしてその息吹を感じることで、「ときめき」センサーが働きやすくなるのだそうです。
以前あるマンションの管理人の方が「注意喚起のポスターは、しばらくすると風景になって誰にも響かなくなる」とおっしゃっていたのを思い出しました。
ずっと収納されていたものもこれと同じではないでしょうか。
書類は全捨てが前提
書籍の後は書類です。それこそ不要な紙類は、多くの家で積もり積もっているはず。
そしてなんと、書類は原則「全捨て」のつもりでよいと彼女は言います。
実際彼女がコンサルティングをしているときに、「これ全部捨てますね」と言ってみると「待ってください、これとこれだけは」とクライアントが慌てて数枚書類を選んだそうです。そして改めて(落ち着いて)ほかの書類を見てもらうと「あれ、本当にこれ以外いらないかも」という話になったのだとか。
そう、紙類に「絶対取っておかなければならない」ものは、実際それほどないはずなのです。
特に取説も契約書もデータ化した昨今「とりあえず」取っているものがほとんどではないですか?
思い出の品は一番最後
書類の次に厳選するのは小物類です。CD・DVD、スキンケア用品、文房具、キッチングッズ。それらの何となくとっているものや、必要以上にあるストック品も見直しましょう。
ちなみに私の母は「安い」と思う都度トイレットペーパーを買い込む人でした。そして母が亡くなり一人暮らしとなった父は、2年以上トイレットペーパーを買うことがありませんでした。
どのご家庭でも、これに似たことが起こりうるはずです。
こうして自分にとって「ときめく」品や、必要なものの適正量に気が付くようになったところで、最後に手をつけるのが思い出の品です。
贈り物や写真などが捨てづらいのは当然のこと。これに最初に手を付けてしまうと、延々見直した末に再度どこかへしまい込むのがオチ。自分の「ときめき」センサーが研ぎ澄まされてから、最後の最後にトライする。そうすることで過去の思い出に縛られず、「今」の自分がときめくかどうかの感覚に気づけるのでしょう。
「ときめく」モノたちを収納します
こうして家の中が「自分の大好きなモノ(ときめくモノ)」だけになりました。
この時点で片づけは終了したともいえるでしょう。そしてようやく「収納」ができるのです。
ここからはさらに彼女の「リバウンドしない収納」のワザが紹介されていますが、それは実際に本で確認してみてください。
収納でモノたちのいるべき場所が確定したところで、祭りの片づけは終了です。
その後も日常的な「片づけ」はありますが、祭りのそれとは違い、「使ったものを元に戻す」作業のみになるはずです。
【注意】手放すモノを身内にあげるのは厳禁!
餞別された「不要なモノ」は基本「ゴミ」として捨てますが、もちろんリサイクルに回せるものやリセールできるものはその限りではないでしょう。
ただしこんまり氏が「やってはいけない」と紹介しているのが、「身内にあげる」ということです。
彼女自身、自分は着けない(似合わない)けれどモノ自体は素敵な服を、よかれと思って妹にあげていたそうです。
しかしコンサルタント業をはじめ、あるクライアントが「ときめかない」ものに仕分けた多くが「姉からのおさがり」と知りハッとします。
私がしていたことは、善意を装いながら自分がモノを捨てる罪悪感を、ただ人に押しつけていただけなのです。
これは同じく妹のいる私には刺さりました。思い当たる節ありすぎ。
それどころか数年前に「この服好きだけど40代ではさすがに無理だなあ」というビビッドな服を、大量に姪っ子に譲ったこともありました。
確認すると案の定、タンスの肥やしになっているようです。反省。
あいまいな表現こそが成功のカギ
具体的な数字に踊らされない!
様々な「ノウハウ」には、具体的な数字が多用されるもの。
片づけで言えば、二年使ってなかったらとか捨てる、一つ買ったら一つ捨てるといったものでしょうか。この指標は一見わかりやすいしインパクトもあります。
例えばベストセラー『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質”を高める秘訣~』など私も拝読し、それなりに刺激も受けました。
これは留学中に感銘を受けた、ホストファミリーの姿をつづったアメリカ人女性の著書です。本当に気に入った10着を着回し、豊かに生きる彼ら。しかしそれはフランスという土地で、フランス人という国民性で成り立つもの。
私自身(おそらく多くの人に)10着はどう考えても現実的ではありません。実際に著者も、自国では実践できなかった話も載せられていました。
この本はある種の「生き方のヒント」として良書。この数字が大事なわけではありません。ご興味のある方はご一読ください。
いずれにせよ、これらの数字はある種のヒントととらえるべきでしょう。
片づけを通じて人生が激変する?
一方こんまり氏は、ご自身のメソッド説明で、あえて「あいまいな」表現を好んで用います。
その最たるは「ときめき」ですし、モノの適正量を自分の中で「カチッと」するポイントという言い回しであらわしてもいます。
本当に自分に合った量や方法、その感性への「気づき」に誰にでも当てはまる数値はないのです。
そもそもこんまりメソッドの本質は、部屋を綺麗にすることだけはありません。
モノを厳選する過程で「自分の判断力や価値観」が研ぎ澄まされ、人間関係や仕事・生き方そのものが好転していくことにあります。
ですから彼女はそれを、片づけのもたらす「魔法」と位置付けているのですね。
スピリチュアルな言動に見える「日本人特有の感性」
モノへの感謝を忘れない
彼女のモノに対する向き合い方は、ある種スピリチュアルめいたところもります。
先に紹介した「収納されていたものは寝ている」という考え方もそうですね。
さらに彼女は、ときめかないモノを捨てる時は「似合わないと教えてくれてありがとう」と手放すのだそうです。これにより罪悪感が消え、モノとの関係に区切りをつけられるのだとか。
人からもらった「ときめかないプレゼント」に対して「そのモノの役割は、あなたに届いた瞬間に『受け取る喜び』を与えてくれた時点で、すでに全うしている」と説明します。
だからこそ使わなくても、「私に届いてくれてありがとう」と感謝を告げて手放していい、と説くのです。
日本人に息づくモノへの接し方
そもそも彼女はモノを単なる物質ではなく、大切に扱えば扱うほど応えてくれる「パートナー」のような存在として愛着を持って接していることがうかがえます。
しかしこれはもともと、日本古来の「八百万の神(すべてのモノに神や魂が宿る)」に通じる精神性。
『トイレの神様』という楽曲がヒットする日本ですから、共感する方も多いはずです。
逆に消費大国アメリカでは先の番組などで、彼女がモノを擬人化したりモノに感謝したりする様子を、実に目新しく半ば奇妙でセンセーショナルな姿勢として、驚きをもって受け止められたというのもよくわかります。
読み終えた瞬間から「祭り」が始まる
この本を読み終えた私は、居ても立っても居られなくなりました。
私は普段から割とこまめにモノを整理整頓し、片付けている方です。しかし改めてクローゼットの服を取り出したところ、すぐに「ときめかない」もので一袋になりました。
ちなみに妹(片づけ下手)にも読むように手渡したところ、仕事から帰った旦那さんが先に読み終え、すぐさま自分のいらない服をまとめにかかったそうです。
さあ次はあなたの番です。こんまり氏の導きのもと、人生に魔法をかけてみませんか。



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