信仰深き少女の真実の記録:ホラー映画「エミリー・ローズ」(2005)

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1999年に向かって過渡期だったホラー映画

映画『ポルターガイスト』や『エルム街の悪夢』を見て震え上がった80年代でしたが。
同時期にゾンビ映画の先駆け『バタリアン』のような、コメディ要素を含んだホラー作品や、ティムバートン監督『ビートルジュース』といったコメディ、さらにポップなお化けたちの『ゴーストバスターズ』がヒットしたり、キョンシーブームをもたらした『幽幻道士』が大流行りしたり。
怖いんだか面白いんだか。怪奇現象や魑魅魍魎ちみもうりょうが、何かと話題や題材になったものです。

今思えば特に日本では、1999年に世界が滅びるという「ノストラダムスの大予言」に、半ば本気で怯える風潮(特に子どもたちには)があったからでしょうね。ホラーを求めつつ、それを茶化すことで逃げ道を作っていたというか。
さらに90年代にはいっそ「終末もの」のパニックムービーが全盛期となったのは、いっそ怖いもの見たさでしょうか。

2000年を過ぎて今更クラシックホラー?

そして核戦争も起きず、隕石の衝突もなく、大王が降臨することなく迎えた2000年ミレニアム。
むしろ就職氷河期という現実に打ちのめされながら社会人になった私としては、本題「エミリー・ローズ」の告知を見た時、今更エクソシストもの⁉と感じたものです。
とはいえ、あまりにその宣伝が怖かったため(悪魔祓いでのけぞる主人公がエグイ)、逆に観ずにはいられませんでした。

ポルターガイスト現象や悪魔憑つきを、ただただ「荒唐無稽」なエンターテインメントものとひとくくりにしていた私。この映画どんだけビビるかしら?と、絶叫マシーンに乗るような心持ちで視聴したのですが。
結果、心から感動し「悪魔祓あくまばらい」や「エクソシスト」の概念が根底から打ち崩されました。

現実に起きた事件と悪魔祓い

この映画は1976年ドイツで発生した、実際の事件がモチーフになったものです。
そのためフィクション・ホラー映画でなく、あくまで実話をベースとしたホラー・サスペンスの位置づけであることも特筆すべきでしょう。また舞台の大半が「法廷」である点も、この映画の大きな特徴です。

怪奇現象に苦しむ少女

19歳のエミリー・ローズは真夜中の午前3時、焦げ臭い匂いで目を覚まし、何かに押さえつけられるようにしてもがき苦しみだしました。午前3時は、イエス・キリストが亡くなったとされる午後3時の対極。悪魔がもっとも活動できる時間と言われています。悪霊の仕業しわざだと直感しました。
その後も悪魔としか思えない幻覚や幻聴に悩まされるエミリー。次第に日常生活が困難になり、精神疾患を疑われて病院に頼ります。しかし一向に症状は改善せず、医学的治療の限界を感じて地区神父であるムーア神父に助けを求めることになりました。

少女を救うはずの悪魔祓いでまさかの悲劇が

そうして悪魔と対決することになった神父。
精神疾患用に処方された薬を絶ち、すべてを悪魔祓いに賭けた結果、彼女は栄養失調で亡くなります。
そこでその過失を問われたはムーア神父は、裁判で裁かれることになりました。

果たして彼女の病状・奇行は、悪霊によるものなのか。はたまた、やはり精神病であったのか。

神父の行った悪魔祓いの様子は、写真や録音で詳細に記録されていました。
そして周りの人々が、様々な視点から彼女の様子を証言していきます。
医療従事者の責任は?神父の正当性は認められるのか?

加害者と被害者ではない信心の絆

はじめは、カルト的な施術の行き着いた結果だと思われていたこの事件。そこに情状酌量の余地はないと。
しかし次第に明らかにされていく、自身に与えられた役割に真摯しんしに向き合う神父の高潔な姿勢。
神の与えた試練にひたむきに応え、わが身を犠牲にすることをいとわなかったエミリーの信心深さ。

そもそも悪魔はいるのか。悪魔の憑依はあるのか。
それこそ「悪魔の証明」です。
しかし問題はそこではありませんでした。彼らが何を思い、何を大切に考えたのか。
そうして、裁判官はそれをどう結論付けるのか。

さらなる理解を得るには映画『エクソシスト』もおすすめ

名作ホラー『エクソシスト』(1973)では、そもそも悪魔祓いに懐疑的な神父が描かれています。
両映画とも実に恐ろしいシーンがありますが、どちらもただのホラー映画ではありません。カトリック教になじみのない私たち日本人にとって、新たな視点を得られるチャンスとなるでしょう。

なじみのない世界にみる人間の普遍的な想い

宗教的価値観が根底にあるとはいえ、とうてい理解できない部分もあります。
それでも、何かを心から「信じる」、疑いなく「敬う」ことの尊さ。
信仰をもたない人間なりに、胸を突かれ、気付かされるものがありました。

映画「エミリー・ローズ」は一人の女性の、人生をかけた戦いと献身の記録です。
私はただ賞賛をもって、この映画を紹介したいと思います。

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