先にご紹介した『MANIFEST/マニフェスト』同様、シーズン3で打ち切りの憂き目にあいましたが、ファンからの強い要望にこたえる形でNetflixにより救済された本作。
シーズン4以降が引き続き制作され、シーズン6をもって無事完結となりました。
刑事モノながらSFファンタジー
堕天使「ルシファー」という手垢のついたキャラクター?
キリスト教における「ルシファー」とは、「魔王サタン」や「悪魔」と同一視される存在です。
最も美しい大天使であったものの、創造主である神に逆らい自ら堕天使となったと言われていますが、その経緯や立場は諸説あります。
過去にも多種多様の映画やドラマ・アニメなどで、様々な設定のキャラクターとして扱われてきました。
この物語における主人公「ルシファー」は、父(神様)の命令により、世界創造以来ずっと地獄を統治していた人物(?)です。
しかし地獄での生活に飽きた彼は、「休暇」と称してもう何十年も地上で暮らしています。
現在の彼は、ロサンゼルスの高級ナイトクラブ“LUX”のオーナー「ルシファー・モーニングスター」として名をはせるプレイボーイ。毎夜セクシーな美女(時には男性)を相手に享楽的な生活を送っています。
目の前で起きた悲劇をきっかけに
ある晩彼のもとを、かつての知人で成功を収めた歌手デリラが訪れます。
華のある美しさにも関わらず、どこか不安げで自信を失いかけている彼女。
ルシファーはそんな彼女に、「自分を取り戻せ」と優しく諭します。
その目は元天使らしい、人間への慈愛に満ちていました。
ところがその直後、彼女は銃弾に倒れます。
ともに銃弾を浴びたルシファーは不死身のため無傷でしたが、か弱い人間の彼女は当然即死でした。
激怒したルシファーは、恐ろしい形相の悪魔の顔となって犯人に詰め寄ります。
おびえる犯人に動機を吐かせようとするのですが、狙撃犯は金で雇われただけの末端のチンピラであることが判明しただけでした。
美しい刑事との運命的な出会い
なんとしても真犯人を探し出して、報復することを誓うルシファー。
そこへ捜査のためやってきたのは、クールな美女クロエ刑事でした。
一目で彼女を気に入ったルシファーでしたが、生真面目な彼女は彼の軽率さに不信感を募らせます。
ところでルシファーにはある能力がありました。
彼が目を見て「君が何より望むものは?」と尋ねると、誰もが本心をあらわにするのです。
この力を駆使して、彼は事件の真相を暴くことに成功します。
ところがこの能力は、クロエにだけは全く通用しないことが判明します。
そればかりか彼女のそばにいると、不死身の力さえも失われ人間のように負傷してしまうことにも気が付きます。
またその悪魔的魅力(あるいは魔力そのもの)で、どんな美女もモノにしてきたルシファーでしたが。プレイボーイの本能と言わんばかりにクロエを口説くものの、まったく相手にされないことにも動揺します。
奇抜な民間顧問として捜査の一員へ
クロエに対しては無力感を否めないルシファーですが、警察署からはその手腕を買われて「民間顧問」としてその後も捜査に携わることになります。
美人刑事のパートナーとして、才能ある魅力的な一般男性が顧問となる。この辺は『キャッスル /ミステリー作家のNY事件簿』や『THE MENTALIST/メンタリスト』でもおなじみの設定ですね。
現実的にはあり得るのかしら。
ちなみにどちらも大好きなドラマです。
はじめこそ警戒していたクロエですが、ともに過ごすうちに次第にルシファーの捜査能力を認め、独特のユーモアにも心を許すようになっていきます。やがて二人は既知の友人のような間柄となり、ルシファーには徐々に人間らしさが芽生えていくのです。
愛すべき登場人物たち
それにしても登場人物がみな愛らしい。
主人公ルシファーとヒロインのクロエは、鉄壁の美男美女のようで、どちらも素直でピュアな一面をちょいちょいのぞかせます。
かわいくてサイコーな女性陣
さらに夫と別居中のクロエには一人娘トリクシーがいるのですが、彼女はなんとルシファーが大好き。しかし人間の子どもになじみのない彼は、子猫のように彼女をつまみ上げ邪険にします。
それすらキャッキャと喜ぶ、前歯が生え変わり中のトリクシーも、戸惑うルシファーも微笑ましい。
また事件の捜査で出会った、デリラの元セラピー精神科医のリンダもいいキャラクター。
始めこそルシファーの魅力にの虜となって身体の関係をもちますが、やがて彼の変化を鋭く読み解くよき相談相手となっていきます。
ルシファーの片腕でもある魔物のメイズは、サディスティックで色っぽいバーテンダー。
魔物らしく冷徹な彼女ですが、敬愛していたルシファーの変貌に戸惑い怒りを隠せません。
その謎を解くべくリンダに近づくのですが、彼女と接するうちに「魂を持たずやがて消える」自身の存在について思いを巡らせるように。そうして彼女に心を許し、親友となっていく過程も素敵。
そしてクロエのよき相談相手鑑識官のエラも実に魅力的。
優秀なのに若干尻軽で、男運が死ぬほど悪いのですが、誰よりも清い心をもっており神様に愛される存在だとわかります。
そんなクロエ、メイズ、リンダ、エラで女子会をするようになるのが、ニヤニヤしちゃうくらい好き。
男性陣も負けてない!
ルシファーの兄で天使のアメナディエルは始め、ルシファーを元の任務に戻すべく画策する、刺客のような存在として現れます。
しかし弟の変化の様子を探るうちに、自身も下に見ていた人間への見方が変容していくことになります。
なによりアメナディエルが去っていくときに、屈強な黒人の彼の背中に優美で巨大な羽が現れるところが大好物。ちなみに自分で羽を切り落とした(!)ルシファーから、再度羽が現れるところも萌える。
美しい男っていいわあ。
クロエの元旦那ダンも、ルシファーに比べて見劣りする三枚目なものの、段々いい味を出してきます。
魑魅魍魎?も増えていく!
さらにルシファーの兄弟の大天使たちや、カインとアベルやイブなどの聖書に出てくる人物が次々出てくるので、展開は少々目まぐるしいものになっていきます。
何より彼らの母親である女神(神様の奥さん!?)の悪女ぶりが見もの。
揺れ動くルシファーの心理描写も見どころ
父親である神様へ反抗しつつ…
神様(父親)に反抗?するルシファーは、時に思春期の少年のようでもあります。
そんな彼の心を揺さぶる出来事も次々と発生します。
特にシーズンはじめの神父様の回が感動でした。
かつて素行の悪かった神父の過去を、意地悪くクローズアップするルシファー。
しかし娘を失う経験をもちながらも、揺るぎない信仰心を見せる神父に戸惑います。
どうしてそんな風に神(ルシファーにとって父親)を信じられるのか、彼は策略のもと自分に遣わされたのではないか。
疑心暗鬼なルシファーでしたが、少しずつ彼の本心を信じるようになり歩みよっていきます。
そしてともにピアノが特技な二人が、成り行きで連弾するシーンは感嘆もの。
ピアノを弾ける男性って、魅力的ですよね。(実際にルシファー役のトム・エリスご自身は弾けないそうですが)それを優しく眺めるクロエ。
キリスト教になじみのない日本人にも、反抗期の少年のように揺れ動くルシファーの心理は共感しやすいんじゃないでしょうか。
人間と寄りそうも先が見えない
そうして事件の捜査を通じて、多くの「人間」との距離を徐々に縮めていくルシファー。特にクロエとは特別な絆を育んでいくことになります。
しかし彼は人間ではないため、予断を許さない事態が次々と彼を襲います。
いつまでも地上で楽しく暮らせるはずはない。
はたしてルシファーは地獄に戻るのか。クロエの存在は彼にとって何なのか。
すべての登場人物が魂を揺さぶられていく
物語が進むにつれ、周囲の人間関係がどんどん変化し互いに干渉しながら登場人物たちが各々成長していく過程も見逃せません。
ルシファーを取り巻く状況は、次第に壮大な展開となっていきますが。逆に人間臭いくらい感情豊かになっていく人ならざる者たちに、親近感がどんどんわいてきます。
制作サイドがかわり若干テイストも変容しますが、物語の本筋は最後まで一貫していて、しかるべきクライマックスへと突き進んでいきます。
ファンタジーの中にミステリーがあり、恋愛だけでなくヒューマンドラマを感じさせる、意外性あふれるこのドラマ。救済された価値は十分にあります。
「神には計画がある」その一端をのぞいてみませんか。



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